放射線被ばく管理に役立つ線量指標

放射線防護

放射線被ばく管理の第一歩は、照射された線量や皮膚など臓器の正確な吸収線量などを知ることから始まります。

その方法として、線量計を用いた実測法や撮影条件などから推定する方法があります。

近年、線量レポート(radiation dose structure report: RDSR)の装置への実装が義務付けられました。血管撮影装置やCT装置などでは、このような撮影技術的因子がRDSRに自動的に収集されるようになっており、この情報を被ばく管理に上手に活用することが大変重要です。そこで、血管造影装置やCT装置より出力される線量情報について解説します。

血管撮影検査の放射線線被ばく管理

血管撮影検査とは、目的の血管にカテーテルを挿入し、造影剤を注入しながら撮影し、診断や治療をする手技をいいます。中でも、血管撮影を用いた治療のことをIVR (interventional radiology)と言います。

IVRは、外科手術に比べ低侵襲で患者の身体的負担が軽減され、また、治療に使用されるデバイスの開発も目覚ましく、適応が急速に拡大しています。

一方で、手技が困難な疾患では被ばく線量が増大し、放射線皮膚障害などの発症が問題となっています。

この被ばく管理に、面積線量計(dose area product: DAP)や患者照射基準点(Cアームの回転中心からX線管側に15cm戻った位置)の空気カーマ(air kerma: AK)などの装置出力線量情報が活用できます。DAPは、照射される線量とその照射総面積の積で、単位はmGy・mで示されます。

測定位置はX線照射口に取り付けられたコリメーター(絞り装置)の直上です。

DAPは、空気による減弱や散乱線の影響を無視すれば、入射皮膚面の照射面積で除すことでX線管の焦点から皮膚面までの距離に関係なく吸収線量に変換が可能です。

また、AKは、患者照射基準点の空気の吸収線量で、単位はmGyで示されます。

患者照射基準点という名前にも表されるように、AKは患者の入射皮膚面の吸収線量が模擬されています。実際、患者の正確な入射皮膚線量に換算するためには、被写体からの後方散乱係数や組織線量変換係数などを乗じる必要があるため、そういう意味においては、DAPやAKは大雑把な線量情報ともいえますが、適当数の実測データを取得することで、強い相関が得られることから、勘弁に評価できる優れた情報と言えます。

X線CT撮影装置の放射線線被ばく管理

CT装置では、ヘリカルピッチを加味したスライス厚1cmの吸収線量をCTDIvolといい、単位はmGyで示され、これにスキャン範囲の長さを乗じた値をDLP(dose length product)として、単位はmGy・cmで示されます。

これを直ちに患者臓器線量とするわけにはいきませんが、診断参考レベル(Diagnostic reference level: DRL)にも用いられる重要な線量情報であり、患者のDRLについてCTDIvolやDLPを標準体重で求めておけば、多施設間や異なる装置間の比較が可能な重要な情報となります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました