放射線にはBq(ベクレル)、Gy(グレイ)、Sv(シーベルト)など、いろいろな単位が存在します。
ベクレル(Bq)
1Bqは1秒間に1個の放射線を放出する放射性物質の単位です。通常単独で用いられることはなく、単位体積あるいは単位質量当たりの放射線量を表し、Bq/l、Bq/kgなどが用いられます。α線、β線、γ線など放射線の種類に関係なく用いられるため、Bq量だけで人体への影響を考えることはできません。実際、人体への影響は核種を特定し、その核種が放出する放射線の種類とエネルギーを考慮する必要があります。
グレイ(Gy)
吸収線量ともいわれ、物質がどれだけ放射線のエネルギーを吸収したかを表す量で、1Gyは、物質1kg当たり1ジュール(J)のエネルギー吸収を与える量で表されます。一般的に、放射線治療や医療の場に於ける患者、放射線業務従事者の臓器線量などはこの単位が用いられます。因みに、人体に1Gyのエネルギーが吸収されても、放射線感受性は組織によってその反応は違ったものになります。
シーベルト(Sv)
放射線が人体に及ぼす影響を加味した量です。一般的に、公衆や放射線業務従事者など放射線の影響評価に用いられます。放射線が人体に与える影響は、放射線の種類やエネルギーで異なるため、放射線の種類に対応した「放射線加重係数:wR (Radiation weighting factor)」が決まっており(表1)、吸収線量に乗じることで算出されます。これを等価線量(equivalent dose)といい、確率的影響のリスク評価に使用し、単位はシーベルトを用い次式で求めることができます。
「等価線量=吸収線量×放射線荷重係数」
但し、臓器被ばくの確定的影響を考えるときはグレイを用います。また、眼の水晶体や皮膚など、特定の臓器や組織についての放射線影響を評価する場合、組織によって放射線感受性が異なるため、組織に対応した「組織加重係数:wT (Tissue weighting factor)」が決められており(表2)、これを乗じた値を実効線量(effective dose)といい組織の確率的影響が評価されます。なお、単位はシーベルトを用い次式で求めることができます。
「実効線量=Σ(吸収線量×放射線加重係数×組織加重係数)」
放射線の単位には目的に応じ使い分ける必要があります。放射線障害のリスクを管理(線量限度により)する場合、主としてシーベルトが用いられます。放射線による人体への影響を考えるとき、放射線の種類やエネルギー、組織の違いによる放射線感受性の差、作業時間など的確な把握が必要であり、このことが人を評価する以前の大前提と言えます。
放射線の種類 | 放射線加重係数wR |
X線・γ線 | 1 |
電子線 | 1 |
中性子線 | エネルギーに応じ5~20 |
陽子線 | 2 |
α線 | 20 |
組織、臓器 | 組織加重係数wT |
乳房 | 0.12 |
骨髄(赤色) | 0.12 |
結腸 | 0.12 |
肺 | 0.12 |
胃 | 0.12 |
生殖腺 | 0.08 |
甲状腺 | 0.04 |
食道 | 0.04 |
肝臓 | 0.04 |
膀胱 | 0.04 |
骨表面 | 0.01 |
皮膚 | 0.01 |
脳 | 0.01 |
唾液腺 | 0.01 |
残りの組織、臓器 | 0.12 |
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